電脳遊戯 第5話


「ギアス・・・?」

不愉快そうに眉を寄せ、オウム返しをしたスザクに、ロイドは「あれぇ?」と、不思議そうに首を傾げた。

「スザク君もしかしてまだ説明受けてないのかなぁ?」

ロイドは自分が寝ている間、あるいは席を離している間に、誰かが説明をしていると勘違いしていたのだ。
ならば、ロイドの言葉は真実。
ギアスが関わっている?
どんなギアスが?
ルルーシュは自分以外のギアスユーザーは全て始末したと言っていた。だが、まだ隠れている者がいたという事なのか?
その時、画面の向こうから鋭い舌打ちが聞こえた。
それが誰のものかなんて、考えなくてもわかる。スザクは苛立ちを隠すこと無く口元を引き結ぶと、その瞳をすっと細めた。

『ロイド。セシルと共にランスロットの整備に向かってくれ。スザク、お前は休憩しろ。後の事は俺とC.C.で十分だ』

これ以上ロイドに話をさせる訳にはいかないという事なのだろう。ルルーシュはすぐに指示を出した。何処までも自分を仲間はずれにする気らしい。
ランスロットという言葉に、疲れた顔をしていたロイドの表情が一気に明るくなり「わっかりました~」と、席から勢いよく立ちあがると、ニコニコと笑顔でドアへ向かった。

「ですが何か変化があったら、すぐに呼んでくださいねぇ~」

ランスロットを弄って気分転換すればいい案浮かぶかもしれませんねぇ。ナイスアイディア!流石ルルーシュ陛下!
そう言いながらロイドは鼻歌交じりにさっさと部屋を後にした。

「セシル、ルルーシュの命令だ。ロイドと一緒に行ってこい」

寝不足のロイド一人では不安だからな。
C.C.はまだ部屋に残っていたセシルに言うと、彼女は「陛下、無理だけはしないでくださいね」と頭を下げ、部屋を後にした。
残されたのは画面に向かうC.C.と、不愉快そうにC.C.を見つめるスザク。

「C.C.」

全てを隠そうとする態度のルルーシュとC.C.に苛立ち、自然と低く冷たい声でスザクはC.C.の名を呼んだ。

「枢木スザク。ルルーシュはここにいる。この、中にな」
「中?」
『C.C.!!』
「今のままでは枢木は、何を秘密にされているか気になって休めないだろう。休ませたいなら教えた方がいい。どうせ、この男はゼロレクイエムを完遂させ、お飾りの仇を討つ以外お前に興味など無いのだろう?なら、何も問題はないじゃないか」

今後の事もある、話してしまえ。
引くつもりのないC.C.の言葉に、ルルーシュは再び壁を背に立ち止まった。

『・・・だが、C.C.』
「枢木スザク、ギアスユーザーが貴族の中に隠れていた。そして一昨日、謁見の間でギアスを発動させた」

C.C.はスザクを見ることなく淡々とした口調で言葉を続けた。
ルルーシュの声も無視し、スザクが望んでいるであろう回答を口にする。

「その時ルルーシュの傍にいたのは私一人。ギアス兵もその貴族のギアスの効果範囲外にいた。だから、ルルーシュは一人、その男のギアスに囚われた」
「囚われた?」

スザクの問いなど聞こえないという様にC.C.は続けた。
腹立たしいはずのその態度に、今は怒りよりも焦燥しか湧き上がってこない。そんな自分の心の内に気づきながらも、スザクは表情を変えること無くC.C.を睨み続けた。

「すぐにその男はギアス兵に捉えらえた。幸いというべきか男の能力は右目が発動の媒体となっていたため、その目を布で封じるだけでその力も封じる事は出来たのだが、そのギアス発動と同時に突如姿を消したルルーシュを探しても謁見の間には見当たらず、私は戻って来ていたジェレミアと共にその貴族の屋敷へ向かった。そして屋敷の地下で、このパソコンを見つけた」

すっとC.C.が指さしたのは、いくつものコードを接続した、普通の倍以上あるだろう大きさのタワー型パソコンだった。

「パソコンの画面は付けられたままで、ルルーシュが画面の中に映っていた。最初は転移のギアスか何かだと考え、ロイドとセシルを呼び、この端末の電源を落とさないようにしてここへ移動させた」

パスワードなど、セキュリティがかかっていたら面倒だったからな。
C.C.はそう言うと、ガサガサと音を立ててハンバーガーを袋から取り出した。

「だが、画面の向こうの様子がどうにも奇妙で、私たちは画面上でルルーシュの安全を確認しながら、ルルーシュが今どこにいるかを調べた。ルルーシュが体験している事、私のコードから得られる情報、そしてロイドとセシルが徹夜で解析した内容から一つの答えが出た」

C.C.は大口を開け、ハンバーガーに齧りついた。怒りを込めて齧り付くその姿に、スザクはC.C.がやけ食いをしている事に今更ながら気がついた。
あのC.C.が、自分の苛立ちを少しでも抑えようとやけ食いをしている。ロイドとセシルは、ランスロットよりもルルーシュを優先させて調査をしている。
嫌な予感しかしないこの状況。
冷や汗が、頬を伝った。
緊張から喉が渇く。

「・・・答え?」

裏返りそうになる声をどうにか抑え、不愉快そうな低い声で、尋ねた。

「ルルーシュは”ここ”に居る」

すっと、再びC.C.はパソコンを指をさした。

「この、パソコンの中に組み込まれた、プログラムの中にな」

そう、それは生物の精神を、肉体を電子化させ、自分が組み上げたプログラムの中へ閉じ込めるギアス。

「あり得ない!そんな事、不可能だ!!」

スザクは声を荒げ、否定した。
人がプログラムの中へ?冗談にしては性質が悪い。

『スザク、これは事実だ』

画面の向こうにいるルルーシュが諦めたような声音で告げた。
散々悩み、考えに考え抜いて出した答え。
でなければ、現在ルルーシュが体験している事、ロイドとセシルが解析した事が全て偽りだという事になる。
現実では起こりえないからと、完全に否定することは出来ない。
それは、ルルーシュの死に直結することだから。

『生物の思考も行動も、突き詰めていけばこの肉体を走る電気信号。ギアスを用いれば思考をプログラムの中へ移動させる事は可能だという事で既に結論は出ている』
「肉体まで移動した理由までは、ロイドとセシルでも解析できていないが」

ハンバーガーを食べ終えたC.C.は、包み紙をグシャリと丸め、ゴミ箱へと放り込んだ。

「以前、私にはルルーシュの居場所が解ると話した事を覚えているか?」

C.C.は口元をティッシュでぬぐいながらスザクに尋ねた。
それはルルーシュが皇帝となるまでの間潜伏していた場所で聞いた話だった。
ギアスの契約により、ルルーシュとC.C.は繋がっている。
だから、C.C.はルルーシュが何処にいるのか感じることが出来る。

「貴族の屋敷にあった地下室。それを見つけた理由は、ルルーシュの気配をたどったからだ。そして、その機械の中からルルーシュの気配がするのだけは間違いは無い」

気配を読み間違えるなどあり得ない。
そう言いながら、C.C.は炭酸飲料を口にした。
4人がスザクを騙すために、こんな下らない嘘を突き通すとは思えない。
ロイドとセシルが疲れきっている姿。
C.C.が不安に駆られ苛立ってやけ食いする姿。
ルルーシュの声から感じる焦り。
そのすべてが、これらの話が嘘ではなく、真実だと示していた。
驚きのあまり声を無くしたスザクは、たくさんのコードが繋がっているパソコンに視線を向ける。

「あの中に、ルルーシュが・・・?」
「そうだ。ルルーシュは今、人としての姿を失い、0と1の羅列の中に組み込まれている」

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